犬の皮膚病

教えて!犬の皮膚病シリーズ【膿皮症】

今回の「教えて!犬の皮膚病シリーズ」は、犬で見かけることの多い「膿皮症」についてです。

膿皮症は皮膚の常在菌による細菌感染で起こる皮膚疾患ですが、最近では抗菌薬に対して耐性をもつ多剤耐性菌も問題となってきています。

そのため不用意に多剤耐性菌を増やさないように、自宅で行う外用療法が重要となってきます。

その外用療法のやり方も含めて「膿皮症」について詳しく説明していきますので、ぜひご覧ください!

膿皮症とは?

膿皮症とは、皮膚の常在菌であるブドウ球菌(多くはStaphylococcus pseudintermedius)が増殖することで起こる細菌性の皮膚疾患です。

正常な皮膚強固な皮膚バリア機能によって細菌が侵入することはありませんが、
背景にアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患ホルモン異常などの基礎疾患が存在することで、皮膚バリア機能が弱まり細菌の増殖や侵入を許してしまいます。

また、人や猫よりも犬で膿皮症が多いのは、皮膚のpHがアルカリに傾いていたり、人よりも皮膚が薄かったり、細胞間脂質が少ない、など様々な要因が挙げられています。

犬の膿皮症の分類

膿皮症は病変部の深さによって大きく3つに分類されます。

  1. 表面性膿皮症表皮表面への細菌の定着(細菌の侵入なし)
  2. 表在性膿皮症表皮内や毛包への細菌の侵入
  3. 深在性膿皮症:表皮よりさらに深い真皮や皮下織への細菌の侵入

日常診療で見かける膿皮症の多くは、表皮内や毛包へ細菌が侵入してしまっている表在性膿皮症です。

そのため今回の記事では主に表在性膿皮症で起こる症状や治療について扱っていきます。

多剤耐性菌(メチシリン耐性ブドウ球菌:MRSP)

多剤耐性菌とは、多くの抗菌薬が効かなくなってしまった細菌のことです。

多剤耐性菌の拡大が最近では人医療の方で重大な問題となっていますが、獣医療の方でも同様の問題が起きています。

特に犬の膿皮症の原因菌であるブドウ球菌の中でも、メチシリンをはじめペニシリン系やセフェム系など多くの抗生物質に耐性をもった細菌をメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSP)と呼びます。

 

ブドウ球菌をはじめ犬の皮膚にもともといる常在菌は、生後まもなく母犬から子犬へ伝播すると言われています。

その後犬から犬へ、また犬から人へ伝播していくのか明らかにはなっていませんが、その可能性はいくつか報告されています。

そのため、多剤耐性菌による膿皮症を発症している犬を触ったあとには必ず手洗いをするよう心掛けてください。

膿皮症の症状

膿皮症は主に体幹部に皮疹が出ることが多く、痒みがあります。

毛穴に一致した赤いポツポツとした丘疹から始まり、やがて膿疱となります。

この膿疱は壊れやすく、はじけるとそこから膿が出て黄色いカサブタ(痂皮)ができたり、輪っか状の表皮小環という皮疹を作ります。

輪っか状の表皮小環。

また時間が経つにつれ、多発性の脱毛や皮膚の赤み(紅斑)、色素沈着、フケなども見られます。

短毛種では多発した脱毛が虫食い像のように見えることがあります。

膿皮症の診断

皮膚押捺塗抹検査

膿皮症の診断は、直接スライドガラスやテープを皮疹につけて細胞を確認する「皮膚押捺塗抹検査」で行います。

顕微鏡で見ると、その名の通り丸いブドウの房状の細菌(ブドウ球菌)が確認できます。

さらに、体の中の炎症細胞である好中球が細菌を食べてやっつけようとしている様子(貪食像)まで確認できると感染が成立していると判断し、膿皮症の診断となります。

真ん中の小さいつぶつぶがブドウ球菌。その周りの紫の核をもつ細胞が好中球。好中球の中に細菌が取り込まれています(貪食像)。

 

こんなにたくさん菌が増えてしまうことも・・・

細菌培養検査

膿皮症の原因菌を同定したり、抗菌薬に対する感受性や耐性を確認するために細菌培養検査を行います。

国際的なガイドラインでも、このような場合には細菌培養検査が推奨されています。

  • 2週間治療しても50%未満の改善しか認められない場合
  • 病変が増加している場合
  • 6週間治療しても病変が残っている場合
  • 細胞診で球菌ではなく桿菌が見つかった場合
  • 多剤耐性菌に感染した病歴がある場合

全身性の抗菌薬治療によってもなかなか膿皮症が治らなかったり再発を繰り返してしまう場合には、多剤耐性菌の可能性もあるため一度細菌培養検査を行いましょう。

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膿皮症の治療

膿皮症の治療は、外用療法単独、または全身療法(抗菌薬)の併用が推奨されています。

外用療法

外用療法直接皮膚に薬剤をつけることができるので、皮膚にいる細菌や汚れを直接的に落とすことができます。

また、多剤耐性菌により全身性抗菌薬の使用ができない場合にも外用療法は有効です。

使う薬剤はクロルヘキシジンスルファジアジン銀といった消毒剤を用いることが多く、塗る部位飼い主さんの使いやすさによってローション、スプレー、クリームなど剤形を使い分けています。

しかしながら、人と違って犬は被毛に覆われていたり、さらには外用剤を塗る時にじっとしていてくれなかったりと、なかなかお家での外用療法の実施は大変なことが多いのも事実です。

それを承知の上でここだけは押さえてほしいポイントをお伝えします。

  • 病変消失後7日目まで1日1回実施
  • 少なくとも10分は薬剤が皮膚についているように(ここ重要!!)
  • たっぷりつける!!
  • 散歩前につけて、帰ってきたら拭き取ってOK
    (またはご飯や遊ぶ前など犬が好きなことの前に塗ると良い)

外用剤の塗り方によって治療反応も変わってくることが多いので、難しかったりわからないことがある場合はすぐに獣医師へ相談してみてください。

シャンプー療法

外用療法として、シャンプー療法もとても有効な治療法の一つです。

シャンプーは1回で全身に薬用成分をつけることができるので、病変がたくさんあって局所に塗るのが大変な場合にも使いやすいです。

主に膿皮症では2〜4%クロルヘキシジンを含有した薬用シャンプーを使用します。

シャンプーを自宅で実施する際のポイントはこちら↓↓

  • シャンプーは必ず泡立ててからつける
    (泡立てネットや洗車用のスポンジを使うとやりやすい)
  • 泡で毛並みに逆らわずマッサージするように優しく
    (ゴシゴシ絶対ダメ)
  • 病変部には10分泡がついているように
    (病変部から洗っていくと良い)
  • シャンプー後に保湿剤を使用

シャンプーのやり方に関してはまた改めてまとめようと思うので、お楽しみに♪

全身性抗菌薬

どうしても外用療法が難しい場合や、深在性膿皮症といった深部の細菌感染の場合は全身性抗菌薬を使用します。

犬の細菌性毛包炎に対するガイドラインでは全身性抗菌薬を第一、第二、第三選択薬と分類しており、基本的にはその中の第一選択薬である抗菌薬を選んで使用します。

または、細菌培養検査を行いその感受性結果に基づいて抗菌薬を選択します。

全身性抗菌薬は最低4週間、または病変が見えなくなってから7日目まで継続することが推奨されています。

これも中途半端に抗菌薬を使用してしまうと多剤耐性菌を生み出すリスクがあるため、全身性抗菌薬を使用する場合には、適切な使用期間を守るようにしましょう。

まとめ

今回は犬の「膿皮症」についてまとめていきました。

膿皮症のガイドラインでも塗り薬やシャンプーなどの外用療法がとても重要な治療法として位置づけられています。
そしてこの外用療法は飼い主さんの協力があってはじめて成り立つものです。

ぜひ今回の記事で外用療法のポイントをチェックしてみてくださいね!!

それでは、また〜♪

参考文献

  • Recommendations for approaches to meticillin-resistant staphylococcal infections of small animals: diagnosis, therapeutic considerations and preventative measures. (2017)
  • 犬の表在性膿皮症:治療指針ならびに今後の検討課題(2017)
  • Muller and Kirk’s Small Animal Dermatology 7th ed.(2012)

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